最近の事故事例に学ぶ

発泡スチロール加工工場の火災(発泡樹脂類取り扱い時の火災予防)

 平成16年9月30日正午過ぎ頃、茨城県岩間町安居の発泡スチロール加工工場から出火、 工場を全焼する事故が発生した。現場周辺に猛煙が立ち込めたため、同町が近くの住民に避難を要請した。 従業員の男性三人が軽いやけどなどを負った。県警笠間署などによると、火災報知器が鳴り始めた直後、 工場内の倉庫(指定可燃物届出施設)に保管されていた発泡スチロール製品付近から火が出ているのを従業員が 目撃したということで、出火原因を調べている。工場内には約80トンの製品及び原料があった。

 発泡させた合成樹脂類のうち、不燃性又は難燃性でない固体は指定可燃物となっている。 不燃性及び難燃性を有するものとは、日本工業規格K7201に定める酸素指数法に基づく酸素指数26以上のものである。 樹脂発泡製品には、ベースとなる樹脂の種類、使用目的等によって、水、炭酸ガス、ペンタン、ブタン、 プロパン、ジメチルエーテル、代替フロン等が発泡剤として使い分けられている。樹脂自体の燃焼性に加え、 発泡剤に可燃性ガスを使用しているものもあるため、取り扱いにあたっては下記の点に注意が必要である。

(1)使用する発泡樹脂の種類を確認し、適切な火気管理を行う。火気禁止区域における作業者の喫煙禁止や溶接・溶断・研削作業を行わないことの徹底等。
(2)裸火や電気火花を有する設備(ボイラー、温水器、ストーブ等)からの隔離。
(3)静電気除去。
(4)換気を行う(空気より重いガスの場合は滞留する。 また、加工工程で粉塵雲が生じると粉塵爆発を引き起こすため厳重な火気管理を行う)。 発泡樹脂の中でも、ウレタンフォームには引火すると爆燃するものがあり、特に注意が必要である。 ウレタンフォームを使用する建設現場において、死傷者を出す火災事故が発生している。 某社の発泡スチロールには発泡剤として可燃性のペンタンを重量比3?8%含有している。 貯蔵、製造工程及び成型製品からガスを発生する。各工程間における典型的なペンタンの散逸割合は以下の通りである(某社資料より)。

・70%以上  製造工程
・5~10%  初期貯蔵(2~3日)

大量の製品を受注すると、可燃性ガスの除去が不十分なまま出荷されてしまう可能性がある。
さらに、残存する可燃性ガスは、長期間に渡ってゆっくりと拡散し、大気中に散逸するので、 大量の発泡スチロール貯蔵時には火災予防上の注意が必要である。


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